ご相談のケースでは、本店で既に建設業許可を取得されており、同じ工事業種、同一県内での支店展開をご検討でした。
営業所追加時の手続的なご回答、さらには支店展開についてのご提案をさせていただきます。
建設業法における「営業所」とは
工事の見積もりや、請負契約の締結を行なう日本国内の事務所が、建設業法上の「営業所」に該当します。
また、契約締結を行っていなくても、他の営業所に対して契約締結の指導監督を行う本支店等も該当します。
登記しているかどうかや、「本店/支店」「本社/支社」「営業所」等の名称は関係なく、請負契約締結権限の有無が重要な判断基準です。建設業法§3 建設業法施行令§1
建設業法上の営業所には該当しない例
一方で、工事の請負契約に関係のない営業所や、日本国外の営業所は該当しません。
例えば、以下のような場合は建設業法上の「営業所」にあたりません。
- 建設コンサルタント部門のみの本社
- 建設資材販売のみを行う支店
- 本店や工事発注者との連絡事務のみを行う事務所
- 工事の施工のみを行う営業所
- 海外に設置された支店
「主たる営業所」と「従たる営業所」
建設業法上の「営業所」が複数ある場合は、他の建設業の営業所を指揮監督している営業所を「主たる営業所」、それ以外は「従たる営業所」になります。「主たる営業所」は1か所のみとなり、登記上の本店と一致する必要はありません。
このため、支店であっても「主たる営業所」になり得ますが、指揮監督権限の実態がなければなりません。
そして「従たる営業所」には、代表取締役から契約締結権限等を与えられた支店長等の使用人(建設業法施行令第3条に規定する使用人”令3条の使用人”と言います。)や、会社代表権のある取締役が常駐していること、さらに、本店とは別の新たな「専任技術者」の常駐が必要です。
自治体の入札参加には、建設業法上の「営業所」が必要
支店地域での公共工事は、建設業法上の営業所を地域に設置していることが入札参加の要件になっていたり、事実上の受注条件になっている場合が多く、 営業所の実地調査が行われるケースもあります。
支店登記をしている事や、支店地域の銀行口座を持っている事実だけでは、地域内で営業活動をしている企業であることを認めていないという事になります。
支店展開の本来の目的
今回のご相談者様の支店が、たとえば連絡事務や工事施工のみを行う場合は、建設業上の「営業所」にあたりませんので「従たる営業所」の届出は不要というのが手続の事務的な回答になります。
しかしながら、ご相談者様が達成したいことは、支店展開によって会社規模を大きくし、事業を発展させることです。
「従たる営業所」の届出を出さなかった場合、支店地域の工事見積もりや請負契約時には、本店の代表者や専任技術者が出向いて行なわなければなりません。そのような形態ですと、本来の支店登記のメリットである決裁スピードの速さが活かせません。
支店に独立した権限をもたせ、自らの意思決定で営業活動を行うために、建設業法上の「営業所」の要件を満たした上で「従たる営業所」の届出手続きを行うことで、本来の目的が達成できます。
さまざまな技術者制度と営業所の関係
建設業には多くの「技術者」制度があり、その要件や義務は高い頻度で改正され続けており、支店展開に際して配置が必要になる技術者について最新法令を常に把握しておかなければなりません。
建設業許可取得のために必要な技術者と、建設業許可を取得した場合に施工現場で必須となる技術者は別であり、さらには一式工事業者が一式工事の専門工事部分を自社施工する場合に必要になる技術者、特定建設業許可取得の要件となる技術者、経営事項審査で評価される技術者の要件、そして技術者の施工現場への専任が必要になる工事についても、資格要件、雇用形態の要件、兼務、兼任の可否を正確に理解する必要があります。
「主任技術者」と兼務、兼任について
公共/民間、元請/下請、500万円以上/未満に関わらず、 建設業許可を受けている業種については、施工現場ごとに「主任技術者」の配置が必要です。建設業法§26
一人の主任技術者の複数現場兼務については、一定の金額未満であれば可能ですが、営業所に常駐する「専任技術者」との兼任はできないのが原則です。
営業所に近接した現場であれば「専任技術者」が「主任技術者」を兼任できる特例もありますが、さらに「現場代理人」の配置が必要になる場合があり、「現場代理人」と営業所の「専任技術者」は兼任できません。
支店展開にあたっては、技術者になりうる資格所持者や実務経験者の採用活動に力を入れること、 従業員が積極的に資格取得できる環境を整えること が有効な戦略になります。
支店展開にあたっての注意点
支店展開と建設業許可の関係で、今回のご相談とは別のケースとして、本店とは別の都道府県に支店展開する場合、また、軽微な工事のみを請負う場合でも建設業法の営業所として届け出る必要があるケースについて解説いたします。
大臣許可と知事許可
建設業許可を取得している本店がある都道府県外に、建設業法上の営業所を設置したい場合は「都道府県知事許可」を「国土交通大臣許可」に切り替えなければなりません。(”許可換え新規”と呼ばれます)
本店から遠方の都道府県に設置する営業所で営業活動を行う場合には、大臣許可に切り替えることは必須と言えます。
手続きとしては初めて建設業許可を申請する時とほぼ同じ内容で、本店管轄の国交省地方整備局に新規で申請することになり、許可要件をあらためて証明しなければならず、管轄の地方整備局の運用に合わせた確認資料を準備しなければなりません。
大臣許可を取得することで、広域展開している企業として認知度が高まり、社会的評価が向上するメリットがあります。
支店では軽微な工事のみを請負う場合
「軽微な工事」とは、建設業許可が不要になる、請負金額が税込500万円未満の工事のことを言います。(建築一式工事は1,500万円未満)
建設業許可を取得していない業種については、軽微な工事であれば全ての営業所で請負うことができます。
しかし、建設業許可を取得した業種については、たとえ軽微な工事であっても、建設業法上の「営業所」として届出ている営業所のみが請負うことができますので、注意が必要です。
わかりやすい例として、建設業許可をこれから取得される会社様で、本店と支店の両方で軽微な工事を請負っていて、建設業許可の取得時には、本店のみを営業所として申請した場合を考えてみます。
許可を取得した本店では、金額に関わらず請負契約が可能になりますが、建設業法上の営業所として届出ていない支店では、これまで請負っていた軽微な工事であっても請負契約が結べなくなります。
支店展開の際は、建設業法令を熟知した専門家にご相談を
建設業法上の「営業所」にあたるかは書面上ではなく、営業所の実体があるか、契約行為の実態がどうなっているかで判断されます。
たとえば、請負契約書の名義が本店の代表者であっても、実際には支店長が契約締結を行っている場合は、その支店は「従たる営業所」として届出が必要です。
行政手続の原則では、申請があった場合に初めて審査が開始され(申請主義)、申請内容に疑義が生じる場合は個別に行政庁内で協議され、総合的に判断が下されます。
事実に即した申請の為に、支店展開の建設業許可手続きは、建設業法令を熟知した行政書士ナイスファイト事務所にお任せ下さい。
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建設に活きるブラボーな行政書士 谷口 竜太 プロフィール
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